最後のタイムリミットに向けてApproaching the Final Deadline
今月末から始まる調査旅の計画を今日作っていたのですが、世界的に時代が大きく変わった今、5年前と同じ思考で調査旅を行うことが通用しなくなっていることを感じます。ちょうどパンデミックが始まる2020年前後から私は本格的に日本各地の調査を開始しましたが、当時様々な場所を訪れる中で1つ考えていたことがあります。それは、10年後に同じ調査旅をすることはできないだろうと言うことでした。
その理由は、特に大半の地方が極端に衰退し、とどまることを知らない人口流出と超高齢化、そして1970年代以降の高度経済成長期に作られた全国規模のインフラがもうじき一斉に寿命を迎えるからです。最近でも埼玉や東京で道路が陥没する出来事が起きましたが、都市部のインフラでこの状態ですから、地方はもっと悲惨になることは自明です。しかも、これらインフラを維持・補修する予算が、既にテクニカリーには破綻している無数の地方自治体にはありません。これらを実際に見聞きしてきた中で、2030年頃には今やっているような調査旅は全くできない時代になるだろうと考え、それまでに可能な限り自分の足を使って様々な場所に足を運び、その土地に暮らす人々の話を伺おうと思い、これまで可能な限り旅を続けてきました。しかし、これでも遅いように感じてきました。
すでに何度も訪れている北東北などでも、昨年訪れたときに、2020年には普通に入ることができた山の神社などが、人口減少と高齢化によって管理する人がいなくなり、参道が雑草に覆われてなくなり、入ることすらできないような状況に出くわしたりしました。この傾向を実際の経験として持っている私は、予想していたよりも日本の衰退速度が加速していることを感じ、少し急ぐように想定していた計画を大きく前倒しして、各地の調査を行わなければもう次はないだろうと確信するに至ります。
特に決定的だったのは、この数年の気候変動です(特に今年の夏)。かつての日本には、全国規模で美しい四季がはっきりと分かれており、それらをゆっくりと愛でることができる心の余裕がありましたが、今年の夏が象徴しているように、もはや四季は完全に崩壊しており、春と秋が極端に短くなっている現状を考えると、この季節感を各地で楽しむこともかなり難しくなってきたと感じます。以前からそのように考えたため、特に東日本特有の植生の観点から西日本では見られない美しい紅葉を2019年と2020年に、二年間の秋を使って思いつく限り全て回ってきたのですが、この景色ももうじき見れなくなるかもしれません。
さらに現時点では温暖化に見えるものの、歴史の気候サイクルは寒冷化の前に温暖化に向かう傾向があるため、2030年前後に寒冷化が始まるのであれば、北東北から北海道は現代文明の恩恵に頼って暮らす今の生活にとって、生活自体が不可能となるリスクを抱えています。最近の若狭の調査でも触れたように、当時の縄文人はこうした激しい気候変動を生き抜いたサバイバーでしたが、改めて文明の恩恵と、それが反転する過酷さを実感します。こうなると一層、人々は利便性の生活を求めて都市部に集中し、地方から人がいなくなる事態へ向かいます。
そして最大の問題は、いつ起きるかわからない巨大地震です。ここ最近だけでも、トカラ列島の地震や日本から近いカムチャッカの地震がそれなりに日本にも影響したように、いつ起きるか分からない地震、そして津波は調査を予定している土地、特に沿岸部の歴史的痕跡を一掃してしまう可能性を秘めていることから、これらが起きる前にできることをやっておかなければなりません。特に現実的なリスクとしては、首都圏直下型地震や南海トラフ巨大地震が発生すると、太平洋沿岸の日本経済を支える東海道地域が全体的に麻痺し、多くが消滅する可能性を秘めています。さらに自然災害は大規模な人々の移住を促す動員となるため、風土に根ざす文化を調査しようとしている私にとっては、できるだけ早くこれらを終わらせておく必要があると年々強く感じます。
また、日本の極端な貧困化も酷くなってきており、加速する少子化の現状を見ても、ここから20, 30年で事態が好転する事はあり得ず、もはやこの場所は最後のタイムリミットに入ったと言えます。だからこそ個人の使命、そして日本に生まれた世代の使命として、私はこの場所の未来を国家、あるいは社会的に考えることを最初から手放し、個々がさらに先の数百年、数千年を見越して真剣に考え、行動しなければならない深刻な時代を迎えていると実感しています。最近の日米関税の合意問題を見ても、もう国家・社会次元に何の未来もありません。
こうした複雑な要素を包括しながら考えていると、もはや次の3年が全国的な調査を行うことができる最後の時間になるだろうと考え、長年かけて準備を終えた今、これから一気に行動を起こすことを決意しました。
どの国、街、人々も大きな変動期を迎えていますが、もしも日本を満喫したいとお考えの方がいれば、考えているよりもスケジュールを大きく前倒しすることを強くお勧めします。猛暑が少し和らぐであろう8月末以降までは動きようがないものの、外出するのも憚られる異常な時期となっている今だからこそ、私自身も本格的に動いていこうと決意する契機となりました。おそらく、この決断は私の生涯にとっても、非常に重要なターニングポイントとなります。
その大規模な調査を踏まえて、今後も読者に独自の考察を提示していきます。ぜひ、前人未踏の時空を超えた旅に、今後ともお付き合いくださいませ。