縄文ブームの展覧会の歴史Rediscovering Jomon Wisdom for Sustainable Living in Japan
2011年3月11日の東日本大震災と福島原発事故をきっかけに、日本でも環境破壊、大量消費、人間関係の希薄化による孤独や精神的ストレスなど、20世紀の行き過ぎた資本主義社会に対する反省が生まれています。
環境破壊や精神的なストレスといった新たな課題に直面する中、持続可能なライフスタイルの見直しが行われ、改めて注目されているのが縄文時代です。その縄文時代の特徴は、自然との共生、コミュニティ、スピリチュアリティーの三つに集約できます。
それは、現代の環境破壊に対する自然との調和・共生、孤立や孤独を生む社会に対するコミュニティ結束の再形成、精神的ストレスに対する豊かさやスピリチュアリティーなど多様に見られますが、縄文時代のライフスタイルに未来を感じる人々が増えてきているのが現在地点です。
こうした現代社会特有の問題を背景に、考古学者に限らず、多くの日本人が縄文時代に強い関心を示していることから、今後、数十年をかけて大きなムーブメントを形成することが予想されます。ですが、この縄文文化の見直しは一筋縄ではいきません。
なぜならば、縄文研究が本格的に始まってから、まだ100年も経っていませんが、既に信じられないほどの混乱を随所に抱えて行き詰まっているからです。その主要な原因は、研究者間の相互ネットワークが非常に脆弱であったことから、細分化された縄文研究のカテゴリーが無数に形成されるに留まり、統合的に縄文時代の全体像を理解している人がいないことが挙げられます。
こうした問題意識は、考古学者の間でも20世紀後半の時点で強く意識されていましたが、打開策を発見できないまま、21世紀に突入します。
しかし、縄文人の文化やライフスタイル、さらにはスピリチュアリティーに注目が集まり始める2010年代に入ると、博物館などで縄文展を始めとするイベントが続々と立ち上がり、日本人に強い影響を及ぼします。
そこでまずは、現代の縄文時代の関心がどのように形成されたかについて、展覧会の観点から見ていきます。
遡ると、縄文を扱う主要な展覧会は過去に四度ありました。それぞれの時代に応じて特徴が異なっており、縄文時代への関心が高まってきた歴史背景を知ることができます。以下の開催地は、全て東京国立博物館から始まっています。
まず最初に、1951年に開催された『縄文美術展』です。第二次世界大戦後に行われたこの展覧会では、特に縄文時代の代表的な土器や土偶を中心に扱い、同時にそれを「芸術作品」として位置づける初めての機会となりました。
時代状況としては、1945年の敗戦から占領期にかけて、自国の文化や歴史を内省する機会を剥奪された日本人の不満の蓄積があります。しかし、1950年に朝鮮戦争が勃発し、米国の目が朝鮮半島に集中したことから、日本人が戦後始めて自国を内省する機会が生まれます。
この流れを活用して開催された展覧会に感化されて縄文芸術に関心を持った人々は多く、中でも大阪万博で太陽の塔を生み出した芸術家の岡本太郎などが代表的です。
次は、10年後の1961年に東京国立博物館で開催された『縄文土器大成展』です。この展覧会の時代背景としては、戦後の焼け野原からの復興や、大規模な都市計画が急速に進み、高度経済成長期に突入した影響から、全国各地で多くの縄文遺跡が発見・調査されて、無数の遺物が発掘されたことが関係しています。
全国各地から代表的な縄文土器が集結し、特に造形美や地域ごとの多様性に焦点があてられました。これらを一度に鑑賞できる機会はこれまでなかったため、来訪者は縄文文化の多様性に驚きながらも、統一的な文化的価値を持つことが初めて認識されました。
次が、1986年の『縄文土偶展』です。これまでは「縄文時代」の呼称の由来となった縄文土器に焦点が集中されていましたが、この展覧会では初めて土偶に焦点があてられます。
これにより、主に縄文人の祭祀に使用された土偶の神秘的でスピリチュアルな側面が広く知られるきっかけとなり、大きな縄文ブームが起こります。また、初めて全国を巡回する規模での開催となったため、大勢の日本人が縄文時代に関心を持つ最初の出来事となりました。
最後に、私も来訪した2018年の『縄文ー1万年の美の鼓動展』です。これは縄文時代を本格的に「美術」として再評価した初の大型展覧会であり、全国各地の代表的な土器や土偶が集結しました。その結果、何と開催期間だけで35万人が来訪し、今日に連なる大きな縄文ブームの基礎となります。
しかし、ここであなたは不思議に思わないでしょうか?
なぜ、1986年までに継続的に行われていた縄文時代を広める展覧会がいきなり停滞し、30年以上の歳月を経た2018年に縄文への関心が再び復古したのだろうかと。
実はこの『空白の30年間』が生まれた背景には、日本の1980年代後半に生まれた新たな時代状況が深く関係しています。次回は、そこについて興味深い視座から、スピリチュアリティーの否定に由来する縄文時代の関心の極端な衰退と、30年後に起きた復古について見ていきます。
Rediscovering Jomon Wisdom for Sustainable Living in Japan