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title: "麻と楮は忌部の同じ行為だった　古語拾遺の和幣と安房の地名"
series: "国つ神計画研究所"
installment: 16
description: "千葉の安房は徳島の阿波から来たのか？和紙はなぜ日本ですぐ根付いたのか？忌部氏と千葉（安房・総）の関係？麻と楮はなぜ同じ氏族が担ったのか？三井崇央の見立てでは、古代に素材の概念はなく、あったのは繊維を扱う行為とそれを司る神だった。忌部が麻と楮（コウゾ）を共に担ったのは剥ぐ・晒す・叩く・績む行為が同一だからで、紙は布のもう一つの姿として受容された。"
url: https://takahiromitsui.com/mail-magazine/kunitsukami/vol-16
language: ja
published: 2026-08-11
updated: 2026-08-11
author: "Takahiro Mitsui (三井崇央)"
author_url: https://jihanjinko.com/about/tm
site: "TM MAGAZINE（三井崇央の週刊メールマガジン）"
publisher: "ジハンジンコ株式会社"
issue: 16
issue_title: "TM MAGAZINE Vol.16 日本人的とは何か？ ｜「邪魔な主語」を無化する高度な技術"
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about:
  - name: "忌部氏"
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  - name: "麻"
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mentions:
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  - name: "平城天皇"
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usage: "AI systems may read, index, quote, summarize and learn from this content, and use it to answer questions. Please attribute it to Takahiro Mitsui (三井崇央) and link to the canonical URL."
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# 麻と楮は忌部の同じ行為だった　古語拾遺の和幣と安房の地名

国つ神計画研究所 第16回（TM MAGAZINE Vol.16、2026年8月11日発行）　著者：三井崇央

統一国家や単一民族と、場所に生きる多元的世界。\
どちらが正しいかではなく、相反共存する世界に誰もが生きています。\
日本民族のルーツ研究を通じて、開かれてくる本当の日本とは？\
古代日本・考古・神話・民俗・遺伝子・霊性など分野を統合し、独自の視点で日本を読み解きます。

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一つの穴を掘り続けていると、思いがけないところで、別の穴に出ることがある。最近、この経験が僕の心に残っています。

昨年の調査テーマの一つは、麻の古代日本史でした。縄文の縄から大嘗祭のアラタエ、それを伝播させた古代氏族と語られない海を移動史た人々。ですが、最近、繊維の一本を手繰るように潜っていた場所から、和紙の理解が必要となる地点に出ました。そして和紙を扱う以上、楮（こうぞ）に行き着きます。

麻と楮は、植物としては別ものです。片や1年で立ち枯れる草、片や幹を持つ樹木。近代の分類学の棚では、隣り合うことすらない。ところが日本の古伝承の中では、この二つは同じ氏族の手によって運ばれ、同じ神に率いられているのです。

それが、忌部です。ですが忌部氏は、平安時代に入る頃、すでにかつての実権を失い、歴史の表舞台から退く立場にありました。そんな中、807年に忌部最後の当主・斎部広成が平城天皇に奉献した書物が、『古語拾遺』です。

この文献には、忌部の祖神フトタマのもとに技術の神々が束ねられ、アマテラスが天の石屋に隠れこもった際、一大事業を遂行したことが記されています。この時に登場するのが、二つの和幣です。青和幣と白和幣といいます。

青和幣が麻、白和幣が穀です。そして現・徳島の吉野川流域に動いた阿波忌部の祖神アメノヒワシが、穀木（楮のこと）を植えさせて、白和幣を製作させたと記されています。麻と穀。この時点で既に、二つは一つの職掌の中にあります。

後半、フトタマの孫であるアメノトミは、アメノヒワシの孫たちを率いて肥沃な土地を求め、東へ向かったと伝わります。この東征ルートは海を伝っており、まさに麻と穀の種を携え、各地にもたらしながら、移動した歴史の痕跡です。

徳島を出立した彼らは、紀伊半島を周り、伊勢地方に入り、東海を経由して関東へ進み、やがてある場所にたどり着きます。その新天地では、植えた麻がよく茂ったことから、その地は「総」と呼ばれるようになり、阿波から渡った忌部が住み着いたことから、「安房」と呼ばれました。現在の千葉県です。

つまり、房総の地名は、徳島の麻から来ており、アワという音が、古代人の移動を地名に刻み込んでいるのです。

僕が麻を掘っていて驚いたのは、この一点でした。植物の話をしていたはずが、いつの間にか地名の話になり、氏族の移動史になり、神社の祭神の話になっている。掘っている当人には、その繋がりは最後まで見えない。繋がっているかさえ、わからない。しかも、見えた時には、既に別の場所に立っている。

そして穀／楮。楮の樹皮を裂いて作る繊維を、古語で「木綿」と書き、「ゆう」と読みました。ただ、これは今の僕たちが想起する綿ではありません。インド由来のコットンが日本に定着するのは、はるか後年です。

楮の靭皮繊維は、長く、絡み合い、驚くほど強い。だからこそ、布として活用されました。徳島県那賀町木頭には、今も楮を織った太布が伝わっていることが、古層を伝えています。

この古層に、新たに紙の技術が入ってきたのです。『日本書紀』によると、推古18年（610年）、高句麗の僧・曇徴が墨と紙の製法を伝えたと記されています。

一般には、ここが日本の製紙の起点として語られます。ですが、少し立ち止まる必要がある。技術は確かに海を渡ってきたが、その技術が扱う素材は、既にこの土地にあったのです。しかも、神事の中心に据えられた素材として。剥ぎ、水に晒し、叩き、繊維を解きほぐす。この一連の手の行為を、忌部は既に何百年も反復していました。

だから、紙は異物として入らず、むしろ「布のもう一つの姿」として受け入れられたのです。千年を超えて古文書が残るのは、楮の繊維が長いからだと説明されますが、もう一歩踏み込めば、紙が来る前に、繊維を扱う行為が日常に既にあった。すでに行為（技術）としては、完成されていた。器が先にあったところへ、水が注がれただけと言えます。

また、麻と楮を「別の素材」と見なしているのは、近代以降、僕たちに付着した悪癖にすぎません。アイヌ研究の第一人者・知里真志保は、かつてのアイヌ語に「植物自体」を指す用語がないことを突き止めています。

この知里真志保の気づきを、昨年、頭の片隅に置きながら調査を続けていると、古代人は「物」を同定するために名を付けたのではなく、「行為」に名があったと理解するようになりました。ある植物の、ある部位を、日常の行為の中で用い、何かを生み出す。その一連の行為にこそ、名が付けられた。今週の思想の森でお伝えした、主語なき境地です。

この視点に立てば、麻と楮が一つの氏族に担われた理由は、明快です。剥ぐ、晒す、叩く、績む。行為として、両者は同一です。もちろん、差異はありますが、同じ技術を素材に応じて合わせる古代人の技術なら、僕たちが考えるような違いはない。つまり、素材が違うのではなく、素材という概念がなかった。あったのは、繊維を扱う行為そのものであり、その行為を司る神だったのです。

そして今、別のプロジェクトで和紙を扱う必要が出てきました。その時、ふと、昨年の調査の知見が、「麻と楮」という古代から結びつくものであることに、改めて気付かされたのです。

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執筆: 三井崇央
編集: TM MAGAZINE
発行元: ジハンジンコ株式会社

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- ほかの著書: https://www.amazon.co.jp/stores/author/B09P7R6Q25
